ロボットの動向(2022-Vol2)
2022/10/26作成
10月に50周年を迎えた日本ロボット工業会(Japan Robot Association :JARA)の記念シンポジウムに参加してきました。また同日、IFR(The International Federation of Robotics)から2021年の産業用ロボット世界設置状況が発表されました。その内容をご案内します。
2021年は史上最高の導入台数
IFRが2022年10月13日に発表した「The new World Robogtics report」によると、2021年の産業用ロボットの設置数は過去最高の517,385台に達しました。このうち中国は約半分の268,195台の設置で世界一の市場となっています。中国は伸び率でも前年比51%増となり、急速にロボット化が進んでいることが伺えます。
出典:The International Federation of Robotics
日本は2位の設置台数で47,182台の実績となっています。また日本は世界一の産業用ロボット生産国でもあり、世界全体の産業用ロボット供給量の45%を占めています。
ロボット産業においては2022年の為替レートは日本製ロボットの割安感を感じ有益なものとなりそうです。
出典:The International Federation of Robotics
地域別に見ると産業用ロボットの導入はアジアが大きなシェアを持っており74%、次いでヨーロッパ16%、米国7%となります。
出典:The International Federation of Roboticsを元に当社作成
「日本ロボット工業会」の歴史
1971年3月に任意団体「産業用ロボット懇談会」として設立した後、72年10月に任意団体「日本産業用ロボット工業会」に改組。73年10月に社団法人化され、94年6月に現在の名称となる「日本ロボット工業会(JARA)」へと改組発展してきました。研究開発支援などを通じて日本のロボット産業の振興に注力しています。
日本でのロボットの発展
1970年代は黎明期として実用化時代、80年代が普及時代といわれ自動車産業と電気機械産業が2大需要産業として市場を牽引してきました。2015年に政府が生産性向上や少子高齢化社会における課題解決の手段としてロボット活用を支援する方針を打ち出した事により食品・医薬品・化粧品の3品業界にも広がってきました。
ロボット活用の展望
記念講演の中で労働生産人口減少に対するAI・ロボットの活用における課題は、現場のデータを取る仕組み作りと、どれだけデータが集められるかとの事でした。現在はサイバー空間を現場と見立ててシミュレーションを行う「デジタルツイン」も実用化されてきており、サイバー空間の活用が増えていきそうです。
また、3K(きつい、汚い、危険)の作業や単純作業のロボット化(楽になるロボット化)から一歩進んで「人間の可能性を拡げるロボット(人の補助、遠隔操作、社会性を備える)」が開発されていくという事です。
誰でも扱え、システムインテグレーターになれるローコード・ノーコードのロボットが開発されるとロボットがぐっと近くなるというお話もありました。一家に一台の時代が来るのもそう遠くないかもしれませんね。
日本ではアニメ「鉄腕アトム」などで古くから擬人化されるロボット・AIですが、西欧では人類を攻撃するようなネガティブな印象で、無機質なロボットとするべきという意見が多いそうです。形状にも文化の違いが出てきそうです。